以前住んでいた家族が離散している、不吉な過去を持つ一軒家。借家となったその家屋に新たに住み始めた若夫婦の世帯に連日、奇怪な現象が起き始める。仲介管理の不動産業者から調べて欲しいという依頼を受け、霊能者は早速乗り込んだのだが……。
前回に引き続き、首都圏空き家に起きる怪事の話です。
数年にわたって放置されていた空き家を一軒丸ごとの賃貸物件として市場に出し、立地がまずまずだったところからすぐに借り手がついたそうなのですが、一ヶ月と経たないうちにその店子の一家が逃げ出したという話を聞かされました。私に依頼してきた業者は仲介を専門にしている所で、所有者は別の個人だったのですが、その男性が霊能者に見てもらいたいと自ら希望してきたとのこと。その家にいわくがあることは、すでに所有者本人も知っている節を感じ取りました。しかし、先方から具体的な説明は何もなかったのです。
当日、当の所有者ははやり現場には現れず、仲介業者のみとの打ち合わせとなりました。彼が言うには、「所有者は隣県に住んでいる四十代の公務員なのですが、自分の実家であるはずのこの家を見るのも嫌だというのです。それなら売却してしまえば良いのに、それもダメだと……。ね、すごく変でしょう。何だか私共も得体が知れない感じがしましてね、今回の先生の見立て次第では、この物件の仲介管理から手を引こうと考えているのですよ」とのことでした。
聞けば聞くほど妙な話でしたが、取りあえずは問題の屋内と敷地を見て回ることに。古びた洋風の建物の玄関前に立ち、西に傾き始めた太陽の位置を元に目測したところ、建物の入り口部分が鬼門の範囲にすっぽりと入っていました。そして裏手に回った勝手口は案の定、裏鬼門。さらに内部を見て回ると、トイレや台所の水回りから階段や廊下の窓の位置に至るまで、まるでわざと設計したかのような凶相を成していたのです。
ちなみにこの家を借りてすぐに逃げ出した店子というのは、東京から転勤してきた若夫婦だったそうですが、最初に奥さんの方が風呂場で黒い人影に遭遇し、続いて旦那さんも同様の霊体をトイレの入り口で目撃したとのこと。以降は屋内の様々な場所で怪異現象が続くこととなり、奥さんが身重だったこともあり、大事を取って退去することにしたそうです。
屋内を見て回る間、じっとりと睨め付けるような視線をずっと感じていたのですが、居間で本格的な霊視に入ってようやくその正体が分かりました。その家には、現在の所有男性の父親に当たる人物の霊が憑依していたのです。語弊がある表現で恐縮なのですが、その人物はいわゆる異常性格者で、死してもなお自分が戯れに作った凶相の家に居座り、訪れる人々を不幸に陥れようとしていたのです。所有者が売ることを躊躇っていたのも、恐らくこの異常な父親の霊を恐れてのことだったのでしょう。
その後、直ちに除霊の浄化行に入ったのですが、かなり強力な悪霊であったため成仏させることはできず、強引に封じるという手段での解決を図りました。これでもう霊は出て来ないはずですが、仲介業者もすぐに手を引いてしまい、今も空き家のままになっているそうです。最後まで釈然としない、不気味な案件でした。
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