今回ご紹介するのは、夜な夜な不気味な女の霊が枕元へ立つという話です。
そこは古ぼけたアパートの一室。過去に人死などは起きていないというのですが……。
神奈川県で数軒のアパートを経営している大家の男性から、お祓いの依頼を受けたことがあります。彼がY市内に持っているアパートの一室に幽霊が出るという噂が広まって、借り手がなかなか現れず困っているとのことでした。早速、現地へ赴きました。
案内されたアパートは、最寄りのJR駅から徒歩五分という好立地でした。建物は木造で築年数は三十五年。一階と二階に五部屋ずつあり、幽霊が出るのは二階の一番奥の部屋。真夜中になるとどこからともなく白い服を着た若い女が現れ、寝ている人の枕元に立ってその顔をじっと睨みつけてくる。さらに耳許に何事か囁きかけてくる、と……。「幽霊が出るなんておかしな話でして、この部屋で過去に人が死ぬような事件や事故が起きたことはないんですよ。本当に出るのかどうか確かめるために私もここに一泊してみたんですが、そのときは何も起きませんでした。でも店子は頻繁に入れ替わるし、その全員が女の幽霊を見たと言って出て行きますから、これはもう専門家の方にお祓いしていただくしかないと思いまして……」。心底困り果てた顔で、大家さんはそう言いました。
私は室内を霊視しながら、幽霊が出るという噂が立ち始めたのはいつ頃からかと訊ねました。「たぶん、五年くらい前ですね」「噂が立つ以前にこの部屋を借りていたのは男性ですか」「事務所の記録を見ないと正確には分かりませんが、そうだと思います。確か二回更新して出て行きましたから、四年は住んでいたんじゃないかな」。それを聞いて私は合点がいきました。「じつは今、女の霊が見えているのですが、これは亡くなった人間の霊ではなく生き霊です。その女性は、以前この部屋に住んでいた男性と恋愛関係にあり、足繁くここを訪れていたようです」。
私の目に映る女性の生き霊は、ひどく悲しげな表情を浮かべていました。その心を読み取ると、五年前、一方的な形で男性に捨てられたということが分かりました。その男性は彼女に何も告げず、突然アパートを引き払って消息を絶ってしまったのです。つまり彼女は、別れた恋人の帰りを彼の部屋でずっと待ち続けていたのです。私はその場ですぐに生き霊祓いの儀式を執り行いました。室内にべったりとしがみついていた霊の思念が次第に薄らいでいき、やがて完全に消え去るのを確かめると、大家さんに「終わりました」と告げました。
それから約一ヶ月後、大家さんから「あの部屋に新しい店子が入りました」という連絡を受けました。以後は何事も起きることなく、現在に至っています。過去に自殺や殺傷事件が起きた、いわゆる事故物件で心霊現象が起きるという話はよく聞きます。しかし、そうした出来事が一切なくても、霊は出るのです。とくにこのケースのように、恋愛や色情関係のトラブルを抱えていた人物が住んでいた部屋というのは、捨てられた相手の生き霊や恨みの念が残っていることがありますので、くれぐれもご注意を。
<<一覧にもどる 電話占い天女